魔法絶対主義家「ミラベルと魔法だらけの家」

監督:バイロン・ハワード ジャレド・ブッシュ

脚本:ジャレド・ブッシュ チャリーズ・カストロ・スミス

2021年

 

あらすじ:祖母が獲得した魔法が代々遺伝する家系に生まれたミラベルはひとりだけ魔法の力がないけど魔法の命運を握っている。

 

ネタバレあり

最高のMV

曲がすごい。すごく良い。

今の流行を曲でも映像でも取り入れているのが私でもわかる。

Jessica Darrow - Surface Pressure (From "Encanto") - YouTube

We Don't Talk About Bruno (From "Encanto") - YouTube

音楽はリン=マニュエル・ミランダ。

「モアナ」や「ハミルトン」、「インザハイツ」の作曲家らしい。

そんなん知ったら見なくちゃじゃんか~

見てて実家を思い出す

この映画は「家族サイコー!」という結末を迎える。

でも、ミラベルはかなりつらい境遇にあった。

・幼少期の通過儀礼に衆目の中で臨んだが、魔法を授からなかった。

・魔法の発現は、無地だった家の壁に扉が出てくるのと同時。扉を開けるとそれぞれの魔法に適した、物理法則を無視した部屋が広がっている。

・魔法を授からなかった子供はミラベルだけ。

・魔法=部屋をもらえなかったミラベルは、通過儀礼前の従兄弟と一緒に子供部屋で暮らしている。

この時点で息切れがすごい。

「もし魔法がもらえなかったら?」

「そのときは、私と子供部屋で暮らせばいい。あなたを1人占めできる!」

年下の従兄弟を抱きしめるシーンは泣ける。

が、彼は普通に魔法を得るのだ。

祖母を頂点とした家父長制

祖母が元いた土地を追われ、夫を亡くした中で得た魔法の力。

魔法の力が宿ったキャンドルは、家と家族の象徴として最上階の窓で灯っている。

ミラベルは通過儀礼以降、祖母から厳しく接せられていた。

母も、魔法を持たない父も、ミラベルには優しいが、祖母の言うことに背いたり、家を出ていったりはしない。

日本的価値観だと、産んだ母親や外様の父親を責めるかな~と思うところでも、徹底的にミラベルだけに厳しい(ミラベルの主観は強く入っているとは思うが)

なぜ……? と思う。自分を守るために、逃げ出してもいいではないか……

愛しているから、一緒にいたい。と言うかもしれないけれど、離れたほうがいい状況というのもあると思う。

コロンビア

「ここコロンビアだよね!?」という気持ちが底にある。

コロンビアという実在の名前を出しているのに、心理的家庭内暴力があり、家父長制であり、コーヒーでアッパーになり、ということがあることを描いていいの!?

というどこかパラレルな雰囲気がある。

こんな厳しい環境を作り出している張本人である祖母が魔法を得たきっかけ。その出来事の説得力がこの物語の捉え方のポイントだと思った。

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/matsuo/2021/11/encanto.php

コロンビア内戦 - Wikipedia

恥ずかしながら、映画を見終わって調べるまで、コロンビア内戦のことを知らなかった。

ふんわりとしていた描写がリアリティをもって胸に落ちた瞬間、祖母の態度に納得をしてしまった。もし自分が同じ状況だったら、同じようにミラベルや家族に対して接してしまうかもしれない。

だからといって、ミラベルや家族たちは、家がつらいと思ったときに逃げ出しても良かったんじゃ……という気持ち自体は変わらないのだが。

 

いろいろ考えるところがあることも含めて、映画体験として好きな作品だなと思った。