SonnyBoyとはなんだったのか
SonnyBoy 5話から12話のネタバレがあります。
SonnyBoy全話を見終えてからしばらくが経った。
4話を見終えたとき、私の頭の中には物語の全貌に対するおおよその予想があった。
しかし、ぜんぜん違ったのだ。
SonnyBoyの物語が向かった先
元の世界と漂流した世界
異世界に漂流してしまった生徒達は、元の世界に戻ろうと画策する。
しかし彼らは自分たちが、元の世界で生活する「オリジナル」の「コピー」であることを知る。
生徒達は元の世界から剥離された存在であり、戻る世界はないのだと。
彼らは元の世界に帰ることを諦め、異世界で暮らしていくことを選ぶ。
そんな中で、長良・希・瑞穂は元の世界に戻るために手がかりを集める。
BSS(僕が先に好きだったのに)
並行宇宙というものなんだろうか?
コピーされた長良たちが漂流した世界には、たくさんの世界があった。
マリオのゲームを思い浮かべてもらえるといいかもしれない。異世界の全てだと思っていた場所は、1-1にすぎなかったのだ。
いろいろな世界をめぐるなかで、長良が希に寄せるひかえめな好意は明確にされていく(ように思う)。そして希からも、長良と共に元の世界に戻るのだという希望を感じる。ふたりの気持ちは、関係でこそ結ばれずともしっかりと通じ合う。
結果的に、漂流世界での記憶を持ったまま元の世界に戻ったのは長良と瑞穂だけだった。
2年間の時差を経て元の世界に戻った長良は、駅のホームで希と出会う。
高校からは学区という制度が薄まるので、進学先が別れた中学の同級生と最寄り駅でたまたまはち会うという経験をしたことのある人も多いんじゃないだろうか。
ホームにはつばめの巣があるのだ。子供だけの残された。それを覗いているときに、希が長良に声をかける。
しかしその邂逅は一瞬であり、希はすぐに待ち合わせをしていたであろう恋人の元へ駆け寄る。長良はふたりを見て、振り返って駅を去る。しかしその表情は明るい。
なんて優しいBSSだろう。だって異世界では長良が選ばれていたのだ。この世界で思いが成就せずとも、別の世界での彼女はきっと俺を愛してくれている。
という、現実の世界で行動しない人間に都合の良い幻想を抱かせてくれる、残酷なやさしさを感じた。
長良は行動した。長良が存在している世界の長良は、行動した長良なのだ。そこをしっかりと肝に銘じるべきである。BSSにロマンティックを見出す人間の多くは長良のようにはいられないだろう。
いったいなんだったのかという要素、わかる必要があるのかの問い
SonnyBoyを最後まで見て、「えっ……?」となったことがいっぱいあった。
たとえば明星。黒幕かと思っていたが、預言者のポジションからはずるりと引き下ろされ、彼は箱舟で死出の旅へと向かってしまった。
校長の存在や、さかさまのバベルの塔や、長良と瑞穂の歩んだ宇宙や……私にはわからないことがたくさんあった。もしかしたら、私ではない人が見たらもっとわかることが多いのかもしれない。
でも、私の感じたわからなさは嫌なものではなかった。むしろ心地よい、大きな存在に赤子のように抱かれているかのような気持ちになるわからなさだった。
わからないことが前提なのかもしれない。理屈がわからなくてもわかるのだ、長良がこれからも前に向かって進んでいくだろうことは。それで私はこのアニメがとてもおもしろかったのだ。
もちろん、わからなさで振り落とされないような工夫がたくさん散りばめられているだろうことは推しはかれる。アニメーションの良さだったり、芝居の良さだったり、物語の運びだったり……いったいこの作品の全貌がどのような形をしているのか、知りたい気持ちはあるけれど、いまのままでも満足している。
おもしろかった~! また見返そ~!